家族が亡くなってしまうと自然と相続が発生しますが、その相続も必ずしもプラスになるというものではなく、時には借金を相続してしまう場合もあります。そして、借金だけでなく、保証人としての地位も相続の対象となります。
被相続人が他人の債務を保証していた場合には、その保証債務も相続の対象となり、相続人は保証債務を引き継ぐのが原則です。ただし、相続しない保証債務もあります。たとえば、就職のときなどに身元保証人というものが必要となることがあります。身元保証人というのは、雇用された人(被用者)が会社に損害を与えた場合に、身元保証人が被用者に代わって賠償をするという契約です。
この身元保証人である地位は、相続の対象とはならないという、大審院時代の古い判例があります(大審院昭和18年9月10日判決)。身元保証契約は、身元保証債務は、通常の保証債務よりも保証人の責任の及ぶ範囲が広範になることなどが理由として挙げられています。
同様に、継続的取引に関する根保証契約についても、同様に保証人の責任の及ぶ範囲が広範になることなどを理由として、「責任の限度額ならびに期間の定めのない連帯保証契約における保証人たる地位は相続されない」と判断された最高裁判例があります。
このように、一部相続の対象とならないと判断された保証債務はありますが、原則として相続人は、保証債務を引き継いだものとして、債権者からの請求を受けることとなります。しかし、相続人であっても遺産は必ずしも受けつがなくてはいけないというわけではなく、相続放棄を行うことも可能です。
相続放棄の手続きはどのように行うのかということになりますが、相続が発生したのが発覚して3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行うことによって債務の承継を全面的に拒否できるようになります。
相続を放棄すると、被相続人が貸金業者から借りていたお金や保証債務などの履行を行う必要はありません。
ただ、遺産分割協議の結果、遺産を受け継がないという合意をしただけでは相続放棄とはなりません(事実上の相続放棄)ので、あとでトラブルにならないためにも、手続きはきちんと行っておきましょう。
個人でも手続きが行えますが、わからないことがある場合は弁護士など法律の専門家に相談してみるとアドバイスをもらうことができます。
そして相続を放棄した場合はマイナスの財産のみならず、プラスの財産も受け継ぐことはできませんので、しっかりと検討してから行うようにしたいものです。
相続と保証債務の関係について
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